あるご婦人がスイスを旅行した時のことです。散歩の途中に山腹にある羊の囲いの所に来た時、中を覗いて見ると羊飼いがいて、彼の周りに沢山の羊がいました。ところが一匹の羊が群れから離れて横に倒れて苦しんでいました。 彼女は羊飼いに声をかけました。「あの羊はどうして倒れているのですか」
「あの羊は足が折れているんです」という答え。「どうして足が折れたのですか」と聞くと、「私がわざと折ったのです」と羊飼いは答えました。彼女はびっくりして「どうしてそんな可哀想な事をしたのですか」と尋ねると羊飼いはその理由を説明してくれました。
「ミセス、私の羊の中で、こいつが一番言う事を聞かないんです。私の声に絶対に従いません。そして危ない崖の上や、深い藪の中に勝手にどんどん行くんです。そして自分が行くだけでなく、 他の羊も惑わして道連れにしてしまうんです。だから私は、この羊の性質を直すために、この羊の生命を救うためにこの羊の足を折ったんです。今では私の手から餌を食べ、私の手を舐め私に擦り寄って来ます。まもなく足も回復するでしょう、そうしたらこの羊は、今度は他の羊の模範となるでしょう。仲間を惑わす代わりに、迷った仲間を連れて戻って来るでしょう。その時、私がこの羊の足を折った目的は達成されるのです。」
私たちの人生に何故しばしば試練があるのでしょうか。どうして神はすぐに救い出してくださらないのでしょうか。その答えも同じです。私たちを造り変え、成長させるのです。試練を通して謙遜や忍耐や従順を身につけていくのです。ところで、その試練によって自分が成長したかどうかを知ることができるでしょうか。
C.S.ルイスの『ナルニア国物語』のシリーズの第2巻に、興味深い話が出て来ます。ルーシーという登場人物が久しぶりにナルニア国に戻って来ます。彼女は、長い間ライオンの アスランと会っていませんでした。『ライオンのアスラン』は、キリストを暗示しているライオンです。アスランとの再会はすばらしいものとなりました。ルーシーはアスランに言います。「アスラン、大きくなったのね」
するとアスランが答えます。「ルーシー、それはあなたが成長した証拠。成長すると私が大きく見えるのだよ」
これは、私たちにも当てはまる真理です。私たちが試練に出合って、そこから出て来る度に、私たちの心の中に人生の真実を求める心が、大きくなっているのなら、私たちは成長しているのです。以前の私より今の私の方が、よりイエス・キリストを愛しているなら、私たちは確実に成長しているのです。