1923年のことです。陸上競技の1マイルレース(1600メートル競争)で、「空飛ぶフィンランド人」と言われたヌルミ選手(1897-1973)が4分10秒3という驚異的な記録を打ち立てました。「こんな記録が出るのは、人間の限界を超えている」と人々は驚きました。あるスポーツ・ドクターは「これは人間が出せるギリギリのタイムであり、これ以上の記録は不可能である」と言いました。
やがて、世界中の人々がこの見解を受け入れた時、この言葉は常識となってしまい、そこにはしっかりとした目に見えない壁ができたのです。
「1マイル4分10秒3、これは人間の限界の数字である。誰も破れない」
そして実に31年間、ヌルミ選手の記録は破られませんでした。陸上選手やコーチの頭の中には、この言葉がしっかりと刻み込まれて、コンピューターのプログラムのようにインプットされてしまったのです。ところが31年間破られなかった記録をイギリス人のロジャー・バニスター選手が4分フラットという記録を出して破ったのです。更に驚くべきことは、このバニスター選手が記録を破った同じ年に、23人の選手たちが、さらにバニスター選手の記録を破ったのです。そして、その後11年間に177回のレースで、100人以上の選手たちによって260回もその記録は更新されていったのです。何が起こったのでしょうか。
不可能と思われていた目に見えない壁を一人の選手が破ることで、「自分にもできる」という確信が他の選手にも広がったのです。更に、その壁が打ち破られることによって、その後10年の間に260回もその記録が更新され続けたのです。私たちの人生や生活においても、自分の限られた世界で「ダメだ、できない、前にもやってみたけれどできなかった、これは絶対無理だ、達成不可能だ」と思い込んでしまって、もう墓標を立ててしまっているものはないでしょうか。
エミール・クーエという心理学者は次のように言います。
「心の底から出来ると思えば、どんな障害が生じても、必ずその目標を実現することが出来る。しかし、簡単なことでも自分から ダメだと思ってしまえば、それは到底越え難い高い山になってしまう」
「今までもダメだったから、これからもダメに違いない」と勝手に決めて諦めてしまっていることはないでしょうか。自分勝手に見えない壁を作って挑戦を止めてしまっていることはないでしょうか。私たちがイエス・キリストを信じて、共に歩むということは、天地創造の神の偉大な力、無限の知恵に支えられて歩むことなのです。パウロはこう言いました。

「私は私を強くしてくださった方によって、どんなことでもできるのです」
<ピリピ4:13>